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真っ直ぐ射抜くような瞳に晒されて、ドクドクと心臓が騒ぎ出す。
「そ、颯汰君っ……!」
「僕だってこんなことしたくない。ちゃんと一ノ瀬さんの気持ち待ちたかった。
……でも、本気で考えるつもりがあるのか、それすら微妙だから」
「……っ!!」
颯汰君が私の身体に圧し掛かって来る。
私の手を押さえつける手の力が強過ぎて、痛い。怖い。
「やっ……。……みっ……」
私は身体を捩って必死に逃げようとした。そして。
「……鳴海っ……!」
無意識に呼んだ名前に、ハッとした。
「……!」
私と同じようにハッとして、颯汰君は息を飲んで手を止めた。
真っ直ぐ私を見下ろす傷付いた瞳に、私はハッと我に返った。
「颯汰君……」
確かに彼の名前を呼んだのに、颯汰君は私から目を逸らした。
「……同じ手で二度も止められるなんて思わなかったです」
颯汰君は目を逸らしたままそう言って、私から手を離した。
そして一歩離れると、私に背中を向けた。
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