止まらない想い

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私は、飛び起きるように身体をおこした。 カタカタと小刻みに身体が震えるのを感じて、ギュッと肘を抱え込んだ。 「颯汰君、あの……」 「全然終わってないじゃないですか」 呼び掛けた言葉を遮られて、私はそれ以上言葉を掛けられない。 ただ颯汰君の背中を見つめると、颯汰君は俯いて自嘲気味に小さく笑った。 「離婚したのに、全然『一ノ瀬茜』に戻れてないじゃないですか」 「え……?」 「自覚ないんですか? ……一ノ瀬さん、この間も保科さんを呼んだんですよ」 ハッと息をついた颯汰君の言葉に、私はただ呆然とした。 「接待で酔っ払って、保科さんを振り切って僕の腕の中に飛び込んで来たくせに。……いざ、抱こうとしたら『鳴海』って」 表情を見せずにただそう呟く颯汰君の言葉に、身体から力が抜けて行く。 覚えてない。 覚えてないけど、颯汰君が嘘をついてるとは思えない。 「……じゃあ、あの時……」 颯汰君の隣で裸で目覚めた朝。 シチュエーションだけなら、ほとんど誤魔化しきれない状況だった。 「何もしてないですよ」 吐き捨てるように、颯汰君はそう言い放った。 「……あんな状態で保科さんの名前呼ばれたら。いくらなんでも、それ以上何も出来なかったですよ」 「あ……」 私から顔を背ける颯汰君を見つめながら。 申し訳ないって思うのに、ホッと息を吐くのを止められなかった。
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