止まらない想い

10/21
5532人が本棚に入れています
本棚に追加
/326ページ
決着をつける。 颯汰君に求められたのは、私にとって当たり前の義務だ。 いつもより少しだけ早目の時間にビルを出て、私はボンヤリと颯汰君に言われた言葉を考えていた。 鳴海に心は残ったままなのか。 颯汰君が話してくれたことも、私の無意識の叫びも、私はまだ正面から受け止められない。 そんなこと言われたって。 私達、本当に離婚したんだから……。 最大の試練だった家族への報告を終えて、私も鳴海も別々の方向にやっと歩き出せたところ。 鳴海に心を残したままだなんて、笑えない冗談だ。 それでも、真剣に向き合う必要があることはちゃんとわかってる。 松本さんも颯汰君も、私に本気をぶつけてくれた。 二人に同じように本気を返す為には、私も自分の心から逃げていられない。 私にとって、今、鳴海はどんな存在なのか。 私は鳴海をどう思ってるのか、これからどういう関係になりたいのか。 自分でも答えの予想がつかない。 私。私は……。 鳴海でいっぱいになる頭の中に、無機質な電子音が入り込む。 それが自分の携帯だと気付いて、私は慌ててバッグの中を漁った。 「も、もしもし?」 反対の耳を手で押さえて、携帯から聞こえる声に集中しようとして。 「あ、いつもお世話になっております。夜分申し訳ありません。 私、東京ベイサンライトホテルの……」 「……え?」 電話の相手は、何度か会ったことのある女性ウェディングプランナー。 十二月に、私と鳴海が結婚式を挙げるはずだったホテルからの連絡だった。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!