守るべきもの

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「……ありがとうございました」 「別にお前に礼を言われることじゃない。 原が提示して来たその他の追加取引を勘案したら、メリットになることが増えたってだけだ」 松本さんが返したある意味素っ気ない一言に、原さんはニッコリ笑った。 「当社にとっても、この増額が締結されるのはメリットですから。じゃ、戻って早速稟議書きます」 「よろしく」 松本さんの返事をほとんど聞かないまま、原さんは書類を抱えて会議室を出て行った。 その背中を息をついて見送りながら、私も自分の手元の書類を纏めた。 「……お前、なんか顔色悪いな。体調悪いんじゃないのか?」 横顔に感じた松本さんの視線と言葉に、思わず手を止める。 慌てて顔を上げて、取り繕うように笑って見せた。 「いえいえ。二日酔いかな。昨日、グループの懇親会だったんで……」 「お前、酒弱くはないだろ」 「……それでも、飲み過ぎれば酔いますよ」 返事をしながら、私は無意識に胃を撫でるように手を当てた。 いろんなこと考えて悩んで、確かに飲む機会が多かった。 そのせいで食欲も失せていたのは、自分でも自覚してる。
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