5590人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ありがとうございました」
「別にお前に礼を言われることじゃない。
原が提示して来たその他の追加取引を勘案したら、メリットになることが増えたってだけだ」
松本さんが返したある意味素っ気ない一言に、原さんはニッコリ笑った。
「当社にとっても、この増額が締結されるのはメリットですから。じゃ、戻って早速稟議書きます」
「よろしく」
松本さんの返事をほとんど聞かないまま、原さんは書類を抱えて会議室を出て行った。
その背中を息をついて見送りながら、私も自分の手元の書類を纏めた。
「……お前、なんか顔色悪いな。体調悪いんじゃないのか?」
横顔に感じた松本さんの視線と言葉に、思わず手を止める。
慌てて顔を上げて、取り繕うように笑って見せた。
「いえいえ。二日酔いかな。昨日、グループの懇親会だったんで……」
「お前、酒弱くはないだろ」
「……それでも、飲み過ぎれば酔いますよ」
返事をしながら、私は無意識に胃を撫でるように手を当てた。
いろんなこと考えて悩んで、確かに飲む機会が多かった。
そのせいで食欲も失せていたのは、自分でも自覚してる。
最初のコメントを投稿しよう!