守るべきもの

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怖い。どうしようもなく怖い。 自分の身体が、自分の物じゃなくなるような感覚から、逃れることが出来ない。 なんだか胸が苦しくて、私は自分の身体を抱え込んだ。 『……もしも産めないってなったら、どうしたらいいですか』 まだいろんなことを冷静に考えられないまま、私は先生にそう尋ねた。 私の質問に、先生も看護師も一瞬だけ目を瞬かせた。 最近はこんな訳あり妊娠も多いんだろう。 呆気ないほど事務的に、今後のことを説明してくれた。 『妊娠十二週までは、日帰りでの中絶手術も可能です』 つまり、決着を付ける猶予はまだ残されている。 『その際は同意書を提出していただきます。お相手の方の署名も必要です』 相手の署名。それなら鳴海に黙ってる訳にはいかないってこと。 多分こういうシチュエーションには慣れてるんだろう。 何も言えずに黙り込む私に、看護師が宥めるように静かな声で呟いた。 『大事なことですから。後悔のないように、真剣に考えて下さいね』 お母さんに近い年代の看護師にそう言われて。 私は俯いて、小さな声で、はい、としか言えなかった。 産むか産まないか。 それは私が自分の意志で決められる答え。 今の状況を考えて、これからのことを冷静に考えたなら、産まないって答えを選択するのが普通だと思う。
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