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鳴海と離婚してしまった後。
夫婦関係を修復出来るかどうかもわからない。
こんな状況で産んでも子供は私生児になるし、何より私はシングルマザーになる覚悟があるのか。
自分のことで精一杯なのに、私は一人で子供を産んで、育てていけるのか。
そんな自信ある訳ない。一人で、なんて無理に決まってる。
私自身が無理だと思うのなら、産める訳がないじゃない。
半分結論に近い強さでそう自分に言い切って、とんでもなく、心が痛んだ。
でも……鳴海の子だよ?
私と鳴海の子なんだよ?
存在してるのかも曖昧なほど、小さな小さな命。
それでも私の中に芽生えた命。
一人じゃ育てられないって思う。
不安で心細くて、一人で産む覚悟なんて出来ないけど。
私が勝手に諦めて、失ってしまっていいものなの?
「……っ……」
お腹をきゅうっと抱きしめてうずくまったら、涙を堪え切れなかった。
頬を伝う涙を感じながら、私はお腹の中にその存在を探ろうと、必死に意識を研ぎ澄ました。
自信なんか全然ない。
お目出度くなんかないけど。
もしかしたら、最悪の場合、この子の父親はいないまま産まなきゃいけないのかもしれないけど。
鳴海と私の子なのに、殺してしまっていい訳がない。
「……産みたい」
自分に勇気付けるように、私はそう呟いていた。
「産みたいよ、鳴海……」
鳴海との関係を修復出来なくても、この子を産んで、私はお母さんになる。
私と鳴海の間に芽生えた命だから。
この命を消すなんて選択肢、どう考えても選べる訳がなかった。
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