守るべきもの

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「そうですね。……みんなの迷惑にならなければ、来週一日くらいお休みもらおうかな」 笑って返した私に、上野さんは軽く頷き返してくれた。 それを見て、私は席から立ち上がった。 「でも、その前に。今期の実績、上乗せしてきます」 少しだけおどけて笑いながら、契約書を収めたカバンをポンと叩いて見せた。 上野さんも私の背中を押すように、おう、と手を上げて送り出してくれる。 今日無事にアメンド契約を締結したら。 颯汰君と松本さんに返事をして、ちゃんと鳴海に逢いに行こうって決めていた。 もう一度鳴海に恋する為に。 今度こそ大切なものを見失わないように。 鳴海にもありがとうとごめんなさいをちゃんと伝えて。 それでーー 大好きって。 今の私の気持ちを全部、真っ直ぐ鳴海に向けなきゃ。 届かないかもしれないけど。 私には守らなきゃいけないものがある。 そんなことを自分に言い聞かせたら、今更過ぎる言葉なのに、初めて契約を取った時以上に緊張して来た自分がおかしい。 今まで割と上手く世渡りして来たつもりだったけど、鳴海への告白でこんなに緊張してる時点で私は何かを間違えてる。 それでも、こんな私が今の私。 不器用でもカッコ悪くても、これが私なんだから仕方ない。 「行って参ります」 気合いを入れるつもりで力を込めてそう言って、私はエレベーターホールに向かった。
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