守るべきもの

17/36
前へ
/326ページ
次へ
そんな私の反応に、今度は松本さんの方が苦笑した。 「保科と寄り戻すのか? ……まさかとは思うが、沢尻ってことはないよな」 「松本さん」 「まあ、それが一番スッキリする結末なんじゃねえか? お前みたいなバカ、同じくらいバカな保科じゃなきゃ、釣り合い取れないだろう」 「ば、バカって」 思わずムッとして言い返そうとして、私はきゅっと口を噤んだ。 「松本さん、ありがとうございました。それから、ごめんなさい。 ……私、やっぱり鳴海じゃなきゃダメだってわかったんです」 もう一度言葉を続けて謝ると、松本さんは軽く俯いて息を吐いて笑った。 「……何謝ってんだか。元々それが正しい形なんだから、俺に謝ることないだろ」 顔を上げた松本さんは、スラックスのポケットに手を突っ込んで、私を意地悪く覗き込んだ。 「それともなんだ? ちょっと俺と遊んでから、保科に戻るか? そのくらいしても、罰は当たらないだろうしな」 スッと頬を指でなぞられて、私は慌てて松本さんから一歩距離を置いた。 松本さんは、私の反応に肩を揺すっておかしそうに笑う。 「冗談だよ、冗談」 「も、もうっ……!!」
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5590人が本棚に入れています
本棚に追加