後輩の宣戦布告

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九月末。上半期期末。 毎度のことだけど、最後まで忙しく走り回って毎日を過ごした。 おかげで、仕事以外のことは何も考えられないまま。 午後三時を過ぎて預金勘定が締まれば、いくらか忙しさも峠を越える。 まだどこか慌ただしくても、夕方になればオフィスの空気は少し柔らかい物に変わる。 毎度恒例のことだけど、終業時刻の午後五時を回ると、フロアでは期末乾杯が行われる。 上半期の締め括り。 ようは『半年間お疲れ様、明日から始まる下半期も頑張れ』という、ターニングポイントの打ち上げ。 やたらとお酒だけは用意されているけど、食べ物は貧相。 いつ見ても、人数分の必要量を全くカバーし切れていないケータリングの料理。 それでも他グループや近隣他部署との労い合いの場になるから、雇われの身としては乾杯どころじゃなくても仕事の手を止める。 部長の長い訓示を聞きながら、なんとなく辺りを見回す。 毎回期末乾杯には、親密部署の行員も顔を出す。 前回、三月の年度末には鳴海も同僚と一緒に顔を出した。 今回は来ないかな、と思いながら、それでもキョロキョロと視線を動かして、来るか来ないかと想像を巡らしてしまう。
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