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学内は女子学生の数が少ない。それは、入学前に親戚縁者から言われた通り、次の進路を見据えると婚期の遅れを気にする身内や家族が少なからずいるし、大学ともなると学費もばかにならない。はっきりとした目的もなく進学する女子はあまりいないからだ。
加奈江は、同級生の中に占める女子の割合は少なさから同性の友人を作るのに苦労した。
学生の比率は男子が圧倒的に多いのだから、当然ながらクラスメイトは男子学生ばかりとなる。
となると、彼らと今日明日の天気や四方山話ぐらいはするわけで、それも政には面白くない。
あわせて、彼女は同級の男子学生から様々な誘いを受けるようになった。
「お茶でもどう?」
「映画は好き? 面白い作品が来てるんだけど」
「今度飲み会があるから来ないか」
などなど。
かわすのが大変だった。
高校生の頃にその類の誘いがなかったのは、自分たちが子供だったからでも規則で禁じられていたからでもない。
加奈江が魅力のない女の子だったわけではもちろんない。
彼女の側には常に政がいたから、他の男子が近寄れる余地がなかっただけで、彼のガードがない今、デートの誘いを一再ならず複数の学生から受けると、どうしたものやらと困った。
加奈江は放っておいてほしいのに、彼女を放っておく男子学生はおらず、そのことを政は絶対に良く思っていなかった。
加奈江が他の男子学生と話しているところを見られようものなら、間違いなく彼は機嫌を損ねるので、時には小さくない喧嘩に発展することもあった。
「だって、同じクラスなのだもの。無言でやりすごす方がおかしいでしょう?」
加奈江は決まってこう言った後に続けた。
「私をもっと信じて」
「うん、ごめん。わかってる」
その度、政は謝る。
「カナの言う通りなんだ。わかってるんだけど……。俺――変だよな」
本当に変だ、とやるせなさそうに大きなため息をつきながら。
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