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「…………駄目だった?あっ、もしかしてすでに誰かと暮らしてるの!?」
「…………いや、一人暮らしだけど。…………そう言う事じゃ無くてさ、あの、「あ、ヒナさん?後は僕から太陽君に話しますから。はい、これからお世話になるし自分でお願いしないと。」…………は?これから?」
結月はヒナとの通話を切ると、随分と至近距離まで近づいて、ニコッと笑った。あ、この顔。悪巧みする時の顔じゃねーか。
「…………なんだよ、これからってさ。出張中だけとかじゃねえってこと?…………いつまで?」
結月の母親である塔子さんは、早乙女グループの一人娘だ。彼女の夫は婿養子になる代わりに、仕事は好きなようにさせてもらっているらしい。
だから、早乙女グループを引き継ぐのは結月だ。優等生のコイツなら、大丈夫だろうと思う。うちから近い大学だって、俺の人生とは関係ないハイレベルの学校だ。
…………だけど、実は親父二人ともそこ出身だったりして。出来の悪い俺の、小さなコンプレックスだったりする。
ヒナも平ちゃんも、お前の人生なんだから好きに生きろって言ってくれるけど。
ほんとはさ。
俺だって同じトコに行きたかったなーって、思わないでもない。
俺なりに努力はしたけどさ。やっぱりあの三人には追い付けない。
昔はそこに結月は含まれていなかったのに。
…………ずっと俺を追いかけていたコイツが、俺の先を歩くようになったのは、いつだっただろう。
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