923人が本棚に入れています
本棚に追加
まあ……
緊張してるのは一方的に私だけなんだけど。
私は息の音も立てないようにため息を一つついた。
静まり返った部屋で青木くんは一定のスピードでパソコンのキーボードを叩き続けている。
もちろん、無言で。
私はそのキーボードの音のわずかな隙間を縫って指サックをはめ直し、伝票をめくった。
もうどれくらいこんなことを繰り返しているんだろう。
あの日から……
私が捨てられた日からずっと……
あきらめられれば楽なのに
割り切れれば何でもないことなのに
それが出来ずに
『捨てられない女』にまでなった。
最初のコメントを投稿しよう!