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一人取り残された私は
今までのことが夢だったみたいに、
一人で現実の世界に取り残されたみたいだった。
だけど、
手には青木くんが渡してくれた絆創膏。
瞼を閉じれば、彼の笑顔が残像みたいに残っていた。
自分の足元を見て小さく笑う。
名誉の負傷……。
彼のために……
ううん、自分のために正しい選択をして、
ここまで駆けてきた自分を誇りに思う。
あきらめの悪い女だって自分を蔑(サゲス)んできたけれど、
今は
私って根性あるじゃない……って褒めたかった。
私は痛む足でバランスを取りながらロッカールームへ行くと、
ストッキングを脱いで
赤い傷に彼の優しさを貼り付けた。
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