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私は化粧室に入り、
大きな鏡の前で携帯を握りしめる自分を見つめた。
勢いよく飛び出してはみたものの、
掛け直そうと思って躊躇(チュウチョ)する。
こんな感覚……
さっきだって、味わったのに。
何を……
期待しているの。
期待しただけ、ため息だって深くなるのに。
「……バカじゃないの」
私は鏡の中の自分に向かって呟いた。
あれから携帯は震えていない。
何でもなかったんだ……
このままでは西川課長を待たしてしまう。
私がそのまま化粧室を出ようとすると、
私の手の中で再び携帯が動いた。
驚きで身体が少し跳ねた。
電話を掛けてきたのは……
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