「ねえ。それでも……」 二つの勇気

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西川課長だった。 仕事上、やり取りの多い私たちは連絡先を教え合っていた。 もっとも、プライベートで使われたことは一度もない。 私は慌てて携帯を耳に当てた。 「……はい。田部です」 「あ、田部さん?どうした?もしかして具合でも悪いの?」 「いえ……そういうわけじゃ……」 「なかなか帰って来ないから心配でさ。今日はもう、帰ろうか?」 西川課長の声色は本気で私を心配していた。 その表情が目の前に浮かぶようだ。 こんな私を…… この人は本気で心配してくれている。 「……すみません、すぐに戻ります」 私が言うと、課長は「わかった」と小さく返事をした。
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