622人が本棚に入れています
本棚に追加
「なくしたって……」
私は彼の言葉に呆然とした。
「なくしたって、事務所の鍵を?」
そして、彼が言ったことを繰り返す。
『そうだけど』
短く答えた彼に眉間にシワを寄せて言う。
「そうって……。一大事じゃないの!?」
『だから電話してる』
「……そう」
しばらく二人の間に沈黙が広がった。
切り出したのは、
私の方だった。
「このままじゃ青木くん……帰れないじゃないの」
『だから、困ってる』
「……私も戻るから、思い当たるところ探してて。見つかったら電話して」
最初のコメントを投稿しよう!