事例1:恋愛オンチの私。

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  あなたのことはよく知っています。 朝日君と仲がいいからってことだけではなく、深瀬君は私と仲のいい友達の好きな人だから。 顔と名前はしっかり一致している。 とはさすがに言えず、気の利いたことも思いつかないまま無言でやり過ごした。 「光輝の友達だもんなぁ、そりゃ知ってるか」 彼女なんだし...、取って付けたみたいな言葉が狙い澄ませて心を突く。 いいジャブだね、深瀬氏。 ちょうどタイムリーに重くのしかかる悩みを突いてくるなんて、やるね、君は。 友達の好きな人が言葉巧みそうでなかなか手強い雰囲気だから心配になってしまう。 「で?まさかの出血?」 「いや、でっかいたんこぶだよ」 二人して後頭部を眺めて、頭上で会話する。 こんな風に男の人(若くて兄弟とその友達以外)に近付かれた経験がない私は、好きな人との急接近のドキドキにプラス異性に近付かれたときの化学反応的なドキドキにダブルパンチを食らった。 「まじっ?マジのたんこぶっ!?この年になって?たんこぶ?すげぇな」 「なにがすごいんだよ、できるだろたんこぶくらい」 「そりゃ出来るよ?小学生ならごくごく当たり前に。ただ高校にもなってたんこぶとか珍しくね?」 「........」
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