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あ、
そこで黙られると傷が広がります。朝日君。
「てことでちょっと触らして」
「ばかっ、止めろっ」
触ろうとした深瀬君の手が弾かれる乾いた音が頭上で響く。
「なになにぃ?彼女に触るなってか?」
「何言ってんだよ。違うよ。触られたら痛いだろうが」
違うとか、否定しないでください朝日君。
思い知らされたみたいでへこみます。
ドキドキと浮つきと沈みのローテーションが激しくて気持ちが置いて行かれてしまい、自分のものなのに勝手にどっかへ行こうとするからしんどくてたまらない。
思わず胸元に手を当てて、小さく深呼吸した。
「お前は触ってるくせに。独占欲なら独占欲だと認めろよなー」
「だからそんなんじゃねぇって、めんどくせえ奴だな」
とか言いながらずっと頭を撫でてくれる朝日君はやっぱり優しい。
からかわれていい気分じゃないのに、怪我した人を放っておけないとか優しすぎる。
からかわれて嫌な思いさせてごめんなさいって、後でちゃんと謝ろう。
きっと今謝るとまたからかわれる事になりそうだから。
「あれっ、そんなとこでどうしたのー?」
「公共の場所で襲っちゃいけないんだぞーっ」
今は頭を撫でられる喜びに感謝して、たんこぶにもよくやったって誉めてあげようと思ったタイミングで今度は女の子の声が飛んできた。
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