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付き合うとはなんぞやも理解していない女が自分から付き合ってとか言うなんて、どれだけ身の程知らずだったんだろう。
手を繋ぐだけで泣きそうになるなんて知られたら、きっと朝日君に呆れられるはず。
何にも知らずによくまぁ、思い切ったな、って...
「すげぇ、ちっさくて、柔らかい手...」
可愛い...って、そう後付けした朝日君の顔には、呆れなんて類の言葉を見つけるのか難しい笑顔が浮かんでいた。
ばか。
バカみはね。
朝日君がそんな嫌なこと思う人間だって一瞬でも思うな。
相手に失礼だ。
「ごめん、ね。朝日君」
頭の篩にかけるよりはやく、口から勝手にごめんが滑り出ていた。
「ん?何?どれのこと?」
いきなり謝られて、何のことか思い当たらない朝日君が探るようにのぞき込んでくる。
ちっ、
近いっ。
普段から朝日君にはこの距離が当たり前なんだろうか。
にしても近くて、私が背伸びをしたらうっかり鼻とかぶつかってしまう距離。
他の女の子にも、こんな距離から話しかけたり顔をのぞき込んだりするんだろうか。
聞き取れない言葉を聞くときも、こうやってこの距離で顔と顔を合わせるんだろうか。
光輝って、名前で呼んでいるあの仲良し女の子二人にもこんな距離感で話をするんだろうか。
「...あ、うううん、さっきの、もろもろ、からかわれちゃったりとかしてたから」
さっき考えた事なんて口に出来るはずもなく、元々ちゃんと謝らないといけないと思っていたことを伝える。
すると、繋いでいた反対の手が伸びてきて後頭部を撫でていた時とは違う手つきで頭をタップされた。
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