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「ぜんぜん気にしてないから」
急に増えたスキンシップにあたふたしていると、程なく頭から手が放れていった。
肝が煮えるとは、こういうときに使うのかな。
違う気がするけど、私にとっては同じような意味だと思う。
朝日君の一挙手一投足、一言一句に全身で反応してしまうのだから肝が煮えたり冷えたり捻れたりっていう表現は間違ってない。
「なぁ、西野谷ってキョウダイとかいるの?」
「え、うん。お兄ちゃんが二人」
「えっ、二人もいんのっ??いいなぁ、俺アネキ一人なんだけど男兄弟ほしかったんだよなぁ」
羨ましいぜって眉を下げる顔は子供みたいで、たまに見せてくれるんだけどなんかこう妙にキュンとしてしまう。
嬉しくて幸せで、とろけてしまいそうだった。
もうすぐ十一月の空はすっかり夕焼けで、並んで動く影はうんと長く引き伸ばされている。
繋いだ手は暖かくて力強くて、本当にうっかり両想いなんだと勘違いしてしまいそうになって...
朝日君ももしかして私のことを好きになってくれたんじゃないかと勘違いしてしまう自分がいる。
黄昏に感化された胸が切なさに泣いては軋み、自惚れるなとお説教してくる。
朝日君はただ、私のことを知ろうとしてくれてるだけ。
じゃあ何で、手なんか繋ぐの?
好きな人と繋ぐものだよね?
これも、私を知るために必要なこと?
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