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好き同士で付き合ってるわけじゃないんだから、朝日君が私を待ってたり私との放課後を優先してくれる訳ないじゃない。
そう毎度毎度、私に構ってくれる訳ないじゃないっ。
足下に黒い影が差す。
頬に振れる髪の多さとその影で、自分がどれだけ深く頭を落としているか実感できる。
帰ろ。
虚しさともっと早くもっとたくさん勇気を出していたらよかったと後悔しながらドアから離れ、重く沈んだ頭を上げた、
その時、
「西野谷っ?」
耳に心地よく、まだ聞き慣れない声が届いた。
顔を上げて見つめたその先には、一緒に帰ろうと誘いたくて仕方がなかった相手が驚いた顔で友達と立っている。
「えっ、あ、あさ、ひ、くんっ!?あのっ....」
彼より驚いている自信のある私は動転しまくってしまって、目の前がぐるぐる回転する感覚に襲われた拍子に無意識に思いっきり後ずさり、
「ぅっ!!」
後頭部をしたたか後ろのドアにぶつけてしまった。
「ちょっ、西野谷っ!!大丈夫かっ!?」
怒っているわけでもないのにどうしてか叫んだみたいな強い声をとばして、朝日君が走ってきた。
い、
痛い。
そして、
死ぬほど恥ずかしい...。
痛みよりそっちの理由で涙が滲んだ。
究極の羞恥に見舞われた私は、ずるずるとその場にへたれ込む。
「西野谷、見せて」
さっきとは違う優しい声が上から降ってきて、同時にふんわりとした空気と朝日君の香りが届いた。
心拍数が飛び上がる。
「や、へ、平気、だから」
これまでにない近すぎる距離に声が上擦った。
かと思うと、
「っ!!!」
今度は後頭部に大きな手のひらが乗った。
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