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「……あ」
ガトーショコラが口に残ったまま私は一瞬にして固まった。
もごもごと口を動かし、ごくりと飲みこむ。
甘いはずがなんだか苦味の方が勝(マサ)っている。
ケーキにテンションが上がり過ぎていたのと、
あっくんがいつもと全く変わらない態度だったので、
一瞬だけ母とおばさんの姿が頭と視界から消えていた。
頭から湯気がのぼりそうなくらいに顔全体が熱くなる。
「もう、ひかるってば……」
母は焦ってハンカチを取り出して顔を煽(アオ)いだ。
「おばさん、ごめんなさい……」
私が節子おばさんに謝ると、おばさんは満面の笑みで大きな手振りを付けて言った。
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