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俺はぼんやりしていた思考を振り払う。
ひかるから一緒に風呂に入ろうと言い出したのは
……初めてだった。
俺の返事を待つ間にもひかるの顔が徐々に赤みを増していく。
このままじゃ耳から火でも出そうなので俺は答えた。
「ん、入る」
「じゃ、急いでご飯にするね」
ひかるは真っ赤な顔を隠すように俺に背を向けて夕飯の準備の仕上げにかかった。
俺はその背中を見ながらため息ではない、安堵にも似た深い息を吐き出した。
ひかるが一緒に風呂に入ろうと言い出したのは
ひかるに出来る精一杯の俺への励ましだったんだろう。
確かにこれ以上の励ましはないが、
ひかるに心配させちまうなんて……
ちょっとガキっぽかったな。
俺は自嘲気味に笑ってソファにだらしなく放った上着を持って寝室に向かった。
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