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「圭っ!」
適度に張りのある低い声が、西園寺先輩の下の名前を呼んだ。その声に反応して、顔をそっちに向けたせいで、触れていた指が自然と外されてしまう。
「喜多川、迎えに来てくれたの!?」
足元に置いてあったカバンを慌てて掴み、脱兎のごとくソイツの元に駆け出した。普段見られない俊敏な動きに、目を見張るしかなくて。
「そっちまで行ってあげるのに、濡れちゃったじゃないか。風邪を引いたらどうするんだい?」
『大丈夫だよ、こんなの平気だってば。心配性だなぁ喜多川は」
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