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嬉しそうに告げて、喜多川と呼ばれる男に笑いかける先輩。
そのデレデレっとした顔も甘ったるい声も、学校では聞いたことのないものだ――悔しくなって両拳を握りしめたとき、傘を持ってる喜多川が俺の顔を、何故だかじっと見つめてきた。
「うっ……」
見つめてきたというよりも、睨んできたと表現したほうが正しいかもしれない。殺気が伝わってきて思わず声が出てしまったくらい。
俺を睨みながら、ゆっくりと西園寺先輩の顔に近づきつつ、傘を傾けてそれを見えないようにする。
何が行われているか、遠くから差し込まれる夕日が、傘にシルエットを作り出すお陰で、全てを物語っていた。
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