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雨の音がやけに耳障りで、イライラに拍車がかかる。まるで俺の代わりに、泣いているかのよう……
一瞬が永遠の時間(とき)のように長く感じられた。目を逸らしたいのに逸らせられないのは、キスから解放された西園寺先輩の顔が、今までで一番、幸せに満ち溢れていたから。
「いきなり、何やってくれるんだよ、もう////」
「お帰りなさいのキス、したかったから」
「だからって、こんな往来ですることないのに……」
口では文句を言いつつも、嬉しさを滲ませた表情を浮かべ、喜多川の着ている上着の裾をぎゅっと握りしめる先輩。そんな先輩を見て、柔らかく微笑む。
さっき睨んだ顔とは正反対だ。つか俺の存在はふたりにとって、眼中にない状態――
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