1544人が本棚に入れています
本棚に追加
/375ページ
「…………、」
楽な道じゃないとは思ってた。
世は女尊男卑の時代。
男が成り上がるには相応の苦痛を伴うって分かってた。分かってはいたが……ッ!!
「ちくしょうが」
嫌悪感がある。
できれば関わりたくない。
それでもあれを取り込まないと成り上がれない。奴隷にも似た人生が訪れちまう。
俺に選択肢なんかありはしないんだ。
ーーー☆ーーー
真面目に自習などやってられなかった。ぼんやりと窓の外を見やる。このクラスの女子は今日は実戦形式の授業ではないのか、外には見慣れない顔ぶれが超常をぶつけ合っていた。
そこに今日の魔女っ子がいた。
さも理不尽で圧倒的な力が飛び出すんだろうな、と自分でも驚くほど冷めた目をしていたんだが、
華奢な体が宙を舞う。
一年では平均的な魔法に彼女が吹き飛ばされていたのだ。
「…………、は?」
あり得ない。
あんなのあり得ない!
だってあいつは浮遊の魔法を使えるんだぞ。重力操作、風の支配、巨大な翼による浮力の確保、そーゆー原理がある力じゃない。『空を飛ぶための力』を作り出していたんだ。それは一つの系統を形成している。世界のどこにも存在しないものなんだ。そんなものを顕現できるくせにどうして平均児に圧倒されている!?
「な、なあ! あれ、あいつのこと知ってるか!?」
「なんだよ、急に」
「いいから知ってるなら教えてくれ!!」
「なんだよ好みの女でもいたか? やめとけ、女なんてどいつもこいつもバケモン揃いだ。下手に触れたって火傷するだけだぞ」
などと嘯きながらも教えてくれた。前の席の男曰く、
「あいつの名前は宇佐川雪音。典型的な落ちこぼれってやつだよ」
「落ち、こぼれ……?」
なに言ってやがる?
だってあいつは浮遊の魔法を使えるんだぞ。下手すりゃ『魔女』だって発現できないような新たな系統の力を顕現してたんだぞ!!
おい、これって……チャンスだったりするんじゃねえか?
最初のコメントを投稿しよう!