プロローグ 一つの時代の終焉

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その女性は世界を敵に回した。 とはいえその女性が大きな犯罪組織のボスであったとか一国の独裁者であったという話ではなかった。どちらかというとその女性自体の性質は善性であった。人質に取られた女の子を助けようとするくらいには。 ただ、彼女は特別すぎた。 その身に秘めたる力は世界中から恐れられた。 あまりにも無茶苦茶なせいで当時の情報はうまく整理できていない。どれが真実でどれが曲解されたものなのか、嘘と本当の区別がつかないほど彼女のやったことは常軌を逸していた。 最終的には複数の国家が動いた。 核兵器の投下という後の世に致命的な遺恨を残すような手段を選択するほどその『時代』は錯乱していた。 だが。 ある国家にある山奥に潜む女性ごと数十万の人間を吹き飛ばし、核の雨で更なる犠牲を出すような悲劇は起こらなかった。 その女性が内包する力が核の光をねじ伏せたのだ。 のちの『時代』で『魔法』という一つの技術として確立することになる力がその時始めて世界に認識された。 『時代』は変わる。 新たなる『時代』にてあらゆる世界的問題は解決し、新たなる『慣習』が世界を覆う。
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