第一章 この時代での男の生き方

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1 完璧だ、と俺は口元をつり上げる。 場所は国立第八魔法高等学校という味気ない名前の学び舎。一年三組の窓際の席。 そこに座り授業を受けるはいずれ世界を手にする超絶天才美形高校生の東城大和だ。 「ふふっ」 両親を説得して田舎から出てきてよかった。昔の俺を知らないここでならちょろっと演技すれば『気のいいイケメン』って認識される。そうなるように調整した。 今、このクラスの女子の中で俺を悪く言う奴はいないはずだ。多分。ぶっちゃけ下手に刺激して暴れられたら文字通り命の危険があるのであまり深くは関わっていないから、詳しい評価は知らないが。 で、でも、そう悪い評価をされていないはずだ。こうして五体満足どころか傷ひとつなく一ヶ月生活してるんだから。 そう、今はそういう『時代』だった。魔法とかいうトンデモないもんが普及したせいで。 例えばエネルギー問題。 百年くらい前には石油とかの主要なエネルギーがいつ枯渇するかって感じだったらしい。他にも食料とか諸々の問題が複雑に絡み合っていたとか。それこそどこからどう手をつけりゃいいのかすら分からないくらいには。 そんな時に一人の天才が人の手で弄ることなく魔法を発現させたらしい。その力を分析し普及させたことで世界的問題がスパッと解決したとか。 元となる魔力は一晩寝るだけで回復する。 魔法使用による副作用はない。 唯一デメリットとして挙げられるとすれば男には魔法が使えないってところか。 なのにその力は前の時代の最大戦力たる核兵器を超えていた。それほどのエネルギーを秘めていた。 それで……なんだっけか。国連とかいう世界の平和維持機関が壊滅し、新たに『統一政府』が誕生した。まぁ昔の人たちも抗ったんだろうが、『統一政府』にはその時代の猛者(のちの『魔女』)がうじゃうじゃ参加してたって話だからロクな抵抗もできなかったみたいだ。 そんなわけで世界は見事に統一された。絶対女王を中心とする『魔女』どもの思いのままってわけだ。 ……お陰で時代は変わった。 かつての男尊女卑、男女平等という流れに合わせたように女尊男卑っていう慣習が当たり前になっている。 まぁ男尊女卑の時代だって『男のほうが強いから』そうなったわけなんだから、女のほうが強い現代に女尊男卑になるのは当たり前ではあるんだが。
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