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「……っ……」
ごくり、と唾を飲み込む。
あれは強大だ。いずれは『魔女』に届くかもしれない。
そんな怪物に気に入られているのは不安だが、同時にチャンスでもある。
絶対ものにしてやる。
彼女の才覚があれば、世界は無理でもこの国くらいなら手に入れられるかもしれない。
「よしっ」
成功への道のりが見えてきたからか、やる気がみなぎってきた。珍しく自習中に漫画を読んだり昼寝をしたりなどではなく、勉強でもしようと思うくらいには。
手にしたのは化学。
開いたページには水素は火に近づけると爆発しますみたいな小学生でも知ってそうなことを小難しく書いていた。
今の俺はやる気に満ちているんだ。もっと難問を与えてくれ!
というわけでペラペラと先に進む。
「………………………………、」
ぱたん、と教科書を閉じる。
とりあえず、なんだ。あんな原子記号で図形作ったので式を作る、みたいな意味不明なもん勉強しなきゃいけないわけ!? 水素は火で爆発するよーとか葉っぱは光合成するよーとかリトマス紙は色が変わるよーとかそのくらいのレベルでいいじゃん!! いやよー高校生の勉強難しいよー!!
「おいおい。さっきまで変にテンション高かったのに、なに急にげんなりしてんだよ」
「高校生って大変だなって思ってね」
「確かにお前は顔がよくて誰にでも分け隔てなく接するせいで女どもを引き寄せてるからな。大変だろうよ」
「いや、彼女たちを悪く言ったわけじゃないよ」
気分か沈んでいる時でもすんなりと女を庇うことができるくらいにはちゃんと将来のことを考えているようだ。
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