0人が本棚に入れています
本棚に追加
さて、閑話休題。
俺は四科市にある繁華街の場末で喫茶店を営んでいる。
細い込み入った路地を抜けた先にひっそりと小さな店を構えている。
まぁ、裏路地も裏路地の先にある店なので、来る客なんてものは相当なもの好きが多い。
そんな店に、小学校低学年くらいの男の子が住み着いたものだから、常連客からのからかいが酷い。
後々話すことになるが漣は色んな意味で手のかからない子なので、もっぱら常連客に頭を悩ませるのが常になっている。
そんな風に、ここ最近の出来事を思い出している内に時間が経っていたようだ。
気付けば日が傾いており、通りに面した窓からは眩い西日が差し込んでいる。
ほの暗くなった店内に客の姿はない。
店内に客がいれば時間の経過に気付いていたはずだ、客がいるはずもない。
客がいなかったとしても、随分と回想に浸っていたらしい自分に小さく嘆息する。
とりあえず、まずは店内の明かりを点けなければ。
そう思い動こうとした矢先――涼やかなドアベルが鳴り響いた。
「いらっしゃいませ」
反射的に営業スマイルを浮かべると、俺は客が気付く前に店内を明るくするために動き出した。
最初のコメントを投稿しよう!