第1章

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 と、俺や漣の近況をまとめるとこんな感じだ。俺の店を風変わりだというのも如何なものかと思ったが、実際やってくる客は風変わりでは言い切れない人が多いから仕方ない。それに、何故潰れずにいるかも客観的に見たら不可思議だろう。  また、俺自身の事に関しては常連客や友人に言われたことを総合するとそんな感じであるため、俺自身はよくわからない。容姿は普通だし、無頓着でも鈍感でもない普通だと思う。まぁ、世の中に於いて自身と他者の認識において齟齬が生じるのはよくあることなので、考えるだけ無駄なのかもしれない。  そして、漣については全く以てまとめた事そのままだ。まさか本当に捨て子である上に、10歳の子どもがそれを自覚していることが問題であろう。10歳といえば小学校中学年。まだまだ母恋し、という時期であろう。にもかかわらず、漣は母親の事を「あの女」と言うだけで、それ以上を語ろうとしない。なまじ、頭がいいだけに様々な事を理解しているからこそ、語りたくはないのだろう。養父である俺としては知っていたいのは山々だが、無理に聞き出すこともないと思っているので、その問題については放置している。また、拾った当初、年齢を間違えるほどだったのは、単純に栄養不足で発育不全であったためだった。医者に連れて行ったりと色々あったが、今では少しは肉も付いてきたし、ミイラの様に細い、という感じから痩せている、という感じまでは回復してきた。もっとも、いきなり肥え太らせるというのもどうかと思うので、その辺は長期的な視点で考えている。
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