第1章

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 俺の店に通い詰る野良猫のいる風景は、何ら特別なモノではない。むしろ、その野良猫を構うような稀有な人もいるのだが、今日はいないらしい。まぁ、いたらいたで野良猫は構い倒され、しまいには逃げていく場合があるのだが。 「そういえば~、スバルさぁ~ん?」 何かを思い出したのだろう、ノラは目を細めて言う。 「いろんな人から、スバルさんの隠し子について聞かれるんだけどぉ~?」 「隠し子ってな、おい……。で?色んな人に聞かれたノラは何て答えたんだ?」 「え~?さぁ?時と場合によって、答えも変わってたかもねぇ~?」 「おま……!?事の真相というか経緯を知ってて、はぐらかしたのか!?」 相変わらず、随分と野良猫はイイ性格をしているらしい。時と場合によって答えが変わる、なんて、答えをはぐらかした上にあることない事付け足してる可能性がある。 「ったく、常連のくせに俺に味方しないとは……。というか、事態の収束に協力してくれたっていいものを……」 「いやぁ、今回ばかりはねぇ~……。面白そうだからって、あの人からGoサイン出ちゃったしぃ?」 「……あの人って、アレか?ここの常連で、俺が学生時代の頃の先輩で、今ではなぜか公務員なんてやってる愉快犯あの人か?」 「もちろん、その人以外にいないっしょ~?ま~、安心してよぉ~。次第に収まるような範囲内で答えて来たしぃ~?」 「そ、そうか……」 思わず頬が引きつりそうになったが、辛うじて免れた。ノラにGoサインを出した愉快犯のあの人が絡んでるとなると、こちらとしても手が出しにくい。というか、絶対に愉快犯のあの人は俺が噂の火消しにてんてこ舞いになってるのを見て楽しむ気だろう。こちらからアクションを起こすのは危険だ。  そこまで考えたところで、ふと沸き起こった疑問が1つ。 「なぁ、ノラ?どうしてお前があの人と関わりを持ってる?確かにあの人もここの常連だけど、他に接点はないだろ?」
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