第1章

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 そう、ノラと愉快犯のあの人は、この店以外で接点はないはずだ。この店で、さっきノラが言っていたようなGoサインを出すシーンがあれば俺が聞いてて止めに入っていたはずだ。最近、ノラとあの人が同じ時間に店にいた事はないし、いた事が無いのだから話だってしていないはずだ。それなのに、どうして? 「ん~?あぁ、そっかぁ~。スバルさんには教えてなかったんだっけぇ~?」 一瞬だけきょとんとしたノラは、すぐにポケットからスマホを取り出して何かを始めた。スマホで何をするつもりなのだか……。少しの間スマホをいじったノラは、スマホの画面を俺に見せながら言う。 「んっと~、なんていうの?掲示板みたいなアプリがあってねぇ~?掲示板は誰でも作れるしぃ~、掲示板を見れる人を制限できたりするんだけどぉ~、それがコレねぇ~?」 「ん、要するにチャットみたいなんだろう?」 「そそ。そんで、ひまわりの常連さんとはコレで繋がってるんだよぉ~」 「……なるほど、そういうことか」 ノラ曰く、掲示板アプリでこの店の常連たちは連絡を取り合っているらしい。まぁ、必要最低限の関わりの様なものなのでそれ程活発に交流があるという訳ではないようだ。 「それでぇ~、スバルさんの隠し子っていう噂が流れてスグねぇ~?この掲示板であの人が、どうせ野良猫は色んな奴から噂について聞かれるだろうから遊んで来い、ってGoサインを出した訳さぁ~。ちなみに、他の常連さんも黙認してるんじゃなぁ~い?掲示板自体には目を通せるようにしてあるしぃ~」 「……はぁ、もういい。これ以上は聞くだけ俺が疲れるだけだ」 「にゃは~、あの人が喜びそうな展開で何よりぃ~」 と、ノラは再びシニカルに笑った。  それからは、ノラとありふれた世間話をするだけだった。野良猫はどこからともなく様々な話を拾ってくるし、俺は商売上様々な話が入ってくるのでお互いに話のネタは尽きなかった。
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