Round No.4

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********** 静かな院内を息を潜めて進んでいく。 そして あぁ、本当にそうなんだ。 と、直ぐに副院長様の言葉が真実だという証拠を目撃した。 私が入った裏は、非常口。 少し進むと診察室を越えたところに こないだみたいな洒落た受付があって そこから響く声と音に神経が集中する。 大きな音ではない。 かといって小さくもなかったケド。 耳を澄まして、聞こえた声に ブルブルと戦慄めいたものを感じたのは事実。 ちょっとだけ、昔とタブった事が悲しかった。 いたぶりながら どうこうするというスタンスは変わらなくて 無性に虚しく感じて そこに響く生々しい声に、イライラした。 手に取るように分かった。 何をして 何をされて どうなっているか。 私だと、思ったから……。 優しい男子。 気のきく男子。 だけど それだけでは、終われないモノが彼の中にはずっとあったのデスね。 「匠、くん」 いきなりのまさかの私の登場に度肝を抜かれた匠くんは 一瞬腰の動きを止めて 受付カウンターからこっちを見て そして、あの顔で、微笑んだノダ。 なにかが弾け飛びましたよ、ワタシ。 その、気味の悪い笑顔を 匠くんを、気持ち悪い、と思いマシタ。 「モモ、来たの? 待ち合わせ、20時のはずだよ、ねぇ?」 ちょっと待って、というと 一際、下にいる女のヒトの声が高く、高く、甲高くなって そのうち荒い息だけが聞こえてきた。 これは、修羅場デスか? デスね?
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