Round No.4

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下にいる女の子の両手には何かがグルグルと 巻き付けられていて 思わず目を逸らした。 カチャカチャという金属音そして カウンターの押し扉がキイと鳴って そこからいつもと変わらない匠くんが出てきた。 「どうして来たの? 待ってれはよかったのに、モモ」 虫酸が走り抜けて 生理的に嫌悪感が伴う。 ゾゾゾ、と何重にも何重にも下から駆け上がる ボコボコ。 「……るな」 「なに?モモ」 「近寄るな」 「何を言ってるの?」 「匠くん、汚い」 悲しいのと嘆かわしいのと辛いのと 私がバカだったのが どこかの理性をブチ切った。 「モモ、お前もあんなに喜んでたじゃない。 あぁ、モモは今までの中でも最高ランク 会えたときは震えたよ? また、デキるんだ、と思って」 「うるさ、ぃ」 「ダメだよ、可愛いのにそんな言葉遣い それに、そのスタイルもなんとかしなきゃね? 助けてあげる、だから、おいでよ」 にこやかに笑う匠くんが本当に気持ち悪かった。 「アンタに助けを求めたのは、間違いだったデスよ」 だから。 だからだ。 気付いたら拳に力が入っていた。 足が利き脚を軸に地面に反発する。 こっちに向かってくる匠くんに 私は向かっていた。 「モモ」 と呼んだ匠くんの笑顔を見たのはそれが最後。 その後は知らない。 こんな事した事ナイけど 案外上手く、いくんだな、と心の中でガッツポーズを決めた。
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