Round No.1

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「っ、ひ、ひたィ」 思いの外ギュウと引っ張り上げるように摘ままれた鼻。 笑っているようで そう表現してはいけないような倉内翔に どんどん近づいている件、ちょっと! ちょっと!? ちょっと!!!?? そんな事よりも、何よりも 苦しくて、いや、当然、鼻で息できないんだから 苦しいに決まってんでしょーが! 「くっ」 冷酷なブラウンの瞳が 瞬いた。 麗しいほど震え上がるような威力を 目の当たりにしてしまった今日ほど 鬼太郎ヘアにした事を後悔した日は、ない。 くるしっ はぁ、と、息を継ごうとした寸前に 倉内翔の抑圧音が私を突き落とす。 「窒息してしまえ」 「へ」 なんとも鼻声のマヌケっぷりだろうか。 倉内翔は今、何て言った? っていうか、何でそんな事を言われなきゃいけないのか。 真っ直ぐに絡む貫く視線は 文字通り私を後ろの壁に突き刺したまま そして 放たれたセリフ通り窒息寸前まで追い込まれて ヒクヒク、と喉が鳴る。 キュウ、と戦慄いた喉奥で気管がパタリと閉塞してしまいそうなくらい 人ってこんなに苦しくなれるんだ、と考えて ボヤける目の前に白い霞が見えた時 パッ、と離された鼻。 ジンジンとした緩くない痛みが意識を連れ戻してくる。 「っ、はぁ、はぁ、はぁ、っ、ぐ」 「バカイモ、口呼吸くらいしろよ」 とても冷たくあしらわれて。 え?今窒息しろって呪文かけたのそっちですよね? と、思わず問いかけそうなところを 息継ぎのお陰で言わずに済んだ事に胸を撫で下ろす。
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