Round No.0

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倉内翔はそれを流れるように目で追っていく。 おぉ、このフェイスラインの鋭さに 触れてみたひっ! そぉ、と指を伸ばしてみる。 横から、倉内翔の横顔を、輪郭をひと撫でしてみたくて。 その鋭さを、切れ味を、味わいたくて…… 「……おい」 急に響いた太くてひっくい声に 思わず出していた指は引っ込められ 猫のように曲がった背中はピン、と張った。 「はぃっっっ」 ちっ、もうちょっとだったのに…… ギュ、と目を瞑る。 なっがい長い前髪の中で、どっちにしたって 開いているのか 見えているのか どっちかも分からない目を瞑ったっておんなじなんだけど。 「できてんなら早く出しやがれ」 「す、すみませんっ」 ピン、と伸びたまま言うと ジロリ、とその綺麗な色の瞳がこっちを捉えた。 「わ、ぁ!」 思わず口に出てしまった感嘆文。 あまりにも綺麗で、息をするのも忘れてしまう その低密度なブラウンの瞳。 「イモ子」 「はぃっっっ」 「オレに触ったら罰金」 あ、あ、 ありえねしっ! 「はぃっっっ」 また、なっがい長い前髪の中で目をギュギュと勢いよく瞑り 「じゃ、この後PGに回しとけよ」 倉内翔がやっと何もかもの拘束を解いて 離れていく。 あぁあぁああぁ。 疲れた。 どっと、疲れた。 これが こういうところが倉内翔がライバルな理由だっ。 ふっ。
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