Round No.1

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「ふ、うわぁぁぁぁ~」 両腕を天井に突き刺すくらいに上へ 縮こまった身体と詰まった背骨を伸ばすと ゴキ、ゴキッ、と切ない音がナカから響いてきた。 「あいてぇー」 身体、訛りすぎ。 ってゆーか、もうPCの前に居座りすぎ、でしょ。 右手を伸ばして 乱雑にアレコレ積まれた机の上を掻き分けながら 辛うじて見えるマグカップの取っ手に指をかけた。 「ちょっとイモ子ちゃん、それ、いつの?」 後ろの席から声がかかってマグカップの中を覗いてみる。 「んん?」 なーんか、コーヒーから異臭がする。 異臭っていうか、酸っぱい感が漂ってるみたいな なんていうんスか? ミルクが天使の輪みたいに 浮いてる、っていうか…… 分離っていうのよ、それ。 「そのカップ、一昨日から置きっぱだったけど?」 「え、え、え、ええええええええ!」 白い視線を投げてきた内田くんは はぁ、と呆れた顔をこっちへ向けてくる。 「ねぇ、イモ子ちゃん」 シュン、と項垂れると内田くんのおっきな掌が 頭に乗っけられた。 「あんた、そのうち死んじゃうわよ?」 「え、そりゃぁ、困る!」 「だったらさ、前髪切って目!目を出しなさいっ!」 「む、ムムムム、無理っス!」 ブンブン首を振ったせいで酸っぱい液体が ビチャビチャと零れた……そんな気がする。 「あ、ぁぁぁぁぁ~ぁ」 自分が悪いのに、どうしてくれるんだ内田さんよ、バリの落胆ぶりを吐くと 内田くんの視線が私を飛び越えた。 「イモ子、テメ何しでかしてんだよ」 ハッと振り向くと、時既に遅し…… 脳内音楽は極妻に変更。 「あ、かけ」 「気安く呼ぶんじゃねぇ」 「ヒ」 倉内翔は、心底怒っているらしかった。
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