Round No.1

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そりゃぁ、当然。 一昨日から放置してあった、と噂の液体が 隣の席の倉内翔グッズに飛び散っているからだ。 「い、今すぐふき、拭きまっす」 こんなに怒らなくてもいいのにナ、と思ったりもするけど だけど怒るさ、そりゃ当然さ。 ババンっ!! あ! あ! あ! 来ました!壁、バン! あ゛ あ゛ す、スカートが スカートに酸っぱい液体が…… でもこんなに倉内翔と距離が縮まってる。 お互い相当なライバル同士なのに こんなに近付いたら、き、け、ん、でなくって? ボタボタと零れた液体は 紺色のマキシスカートにほぼ全部吸い込まれてしまった。 まぁ壁、バンっ! を直近で人生2回も頂けるなんて…… 透明感のあるブラウンの瞳にうっとり奪われていると 倉内翔がニヒルに笑った。 「ふっ、ざまぁ」 「ひぇ……?」 そうして液体の飛び散った倉内翔グッズは ゴミ箱の中へ。 「あ」 「汚ねぇし、臭ぇし、使えるか 新しいの買ってよこせよ、イモ子」 「は?」 それだけを言って、鞄を持ち立ち上がった倉内翔は オサキデース、と片言を残して 立ち去って行った。 「あーぁ」 「な、なんだ今のは……」 ぷっ、と吹き出した内田くんはパンパン、と2回 目の前で手を叩いた。 「大丈夫?イモ子ちゃん、ほら、立てる?」 スイとマグカップを抜き取り その取っ手型に固まったままの手を取って 内田くんは私を立ち上がらせた。 「スカートどうしようか……」 「あ、ジャージあるっス」
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