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今日は湿度が高くて
嫌な空気が肌にへばりつく。
終業と同時に一目散に会社を抜け出した私は
急いで水速美容外科、新宿院へと駆け出していた。
副院長様の話によると
事務長、匠くんは今日は新宿に滞在中だとの事でございマス。
匠くんに飛ばしたメールのレスにも
20時に新宿○〓で、と記されていたので
間違いないかと思われまスル。
『今日は新宿院は午後からオフなんだけど
きっと、仕事してらっしゃる筈だから
あ、裏にナンバーロックの入り口があってね?
内緒よ?番号は……』
「番号は……」
その前に。
真っ赤なシュシュを握りしめていた掌を解放する。
なっがい長い前髪をギュギュ、とシバって
この歳でザッツチョンマゲ。
目の前が開けに拓(ヒラ)けて
事の真相を確かめてやろうと
気合いが乗る。
だって副院長様が私に伝えた、番号だって
そうしろ、って言う訳じゃないのかな。
と、勝手に解釈。
いや、あんなに意地悪そうだけど
イイところもあるもんだ。
うん。
よし。
「番号は……」
赤が、緑に変わって解錠を示す。
ほわぁぁぁぁぁ。
開きました!
本当に開きましたょ!
静かに身体を忍ばせて
ふぅ、と長い長い息を
これまた静かに吐き出した。
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