第1章

3/35
前へ
/35ページ
次へ
……オレは目覚めると見覚えのない部屋にいた。 暗くて、狭い。 高い位置にある施錠された窓からは月明かりが差し込んでいる。 静かだけど、風で木々がサワサワと揺れる音が微かに聞こえてくる。 両手首の自由が利かない。 縛られてる。 部屋にはオレ以外に誰かいた。 床に寝そべってる男。 その男も手首を縛られていた。 なんなんだ、この状況? オレは一生懸命記憶をたどった。 アラモアナで土産を買って タクシーで帰ろうと思ってアラモアナのスタッフにタクシー乗り場を案内されたんだ。 そしたら、そのガタイのいいそのスタッフに襲われた。 ガッチリ体を拘束されて 「女みてぇなツラしてるな」 耳元でザラついた声がして その男はオレの鼻と口元を布で覆った。 そして気を失ったんだ。 なんで…… オレ襲われたんだ……? そのあとの記憶が全くない。 どれだけ時間が経過しているのかも 全く見当がつかなかった。 床に寝そべってる男は白人男性。 外傷はないけど髪と服装が乱れていた。 オレは成すすべがなく 途方にくれた。 どうしよ…… オレ拐われたんだ。 殺されんの? でも何のために? 「ん……」 白人男性が目を覚ましたようだった。 暗さに目が慣れて、男をよく見ると40代後半のような男性。 「あれ……いつの間にここにいたの」 その男はオレの存在に気づいて、力なく呟くようにそう言った。 その男は生気がなく、 薄明かりでも 顔が青白いのが分かった。 「君も誘拐されたのか……」 その男は上半身をゆっくり起こして壁に背をつけた。 「私はもう数日間ここにいるんだ。」 そう言って項垂れた。 「行方不明になった弟を探していたら、オレまでこんな事になって」 「…………」 ……ダメだ。 非現実過ぎて 全く今の状況が把握できない。 「きっとテロ組織にオレたちは拘束されている」 「…………」 テロとか拘束とか…… 映画の中だけでしか テレビのニュースでしか 耳しないワードだったのに…… 「いや……正確にはこれからテロ組織に引き渡される」 昔から、テロリズムがやけにオレの中で引っ掛かっていたのは こうゆう事態が未来に起きる事を知らずと察知 していたからなのか…… 人の運命は エゴの塊の人間によって 容赦なく 絶たれてしまう。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加