第1章

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明日リューマが帰ってくる。 あっという間だと思った一週間がだいぶ長く感じた。 ゲストハウスで生活していた時も数日会えない時があったけど 夜一人の寂しさは今回計りしれなかった。 たった一週間なのに。 会えない寂しさが、すごく長い一週間に感じられた。 朝、リューマをテレビで見た時 別の世界に居るような リューマが凄く遠い存在に思えて なんだか切なくなってしまった自分。 ハネムーンで行くはずだったハワイに 仕事と言えど、里奈さんと一緒に過ごしている。 どす黒いモヤモヤとした感情の正体は嫉妬。 リューマが里奈さんのブランドの顔になっている事実。 リューマを盗られたような喪失感。 リューマは 私が辞める事を望むならRipsh辞めるって言ったけど もうこうなったら 辞められるわけないじゃん……。 ハネムーンもずっと実現しないかも知れない。 来月7月は結婚記念日。 もう結婚して一年経ってしまうんだ。 リューマとはケンカばっかりしていた。 でも、結局リューマと肌を重ねれば 何でも許せてしまう自分がいて。 王子顔だけど エロくて 優しくて たまに怖くて つかみどころがない 私の夫、リューマ。 離婚まで考えていた自分がウソみたいに リューマと一生添い遂げたいと強く願っている自分。 運命の相手って こんなにも気持ちを惹き付ける存在なんだ。 「ミユキ……今日は機嫌がいいのな」 仕事中、 口元が綻んでいる私にヨシが話かけてきた。 「明日、リューマが帰ってくるから」 つい本音をポロッと言ったら ヨシは呆れたような顔して、肩で息をついた。 「たかが一週間会えないだけなのに、待ち焦がれたような顔して」 鼻で笑った。 「リューマに言っといて、今度二人でサシで飲もうって」 「なんで二人?」 「オレのビジネスの話をするんだよ。ミユキをスタッフとして迎い入れたいからその話もしたいし。 ミユキはいない方が男の本音も言える」 「うん」 男の本音って意味分からないけど…… 私、ここ、辞めるんだ…… 長年いたここを、離れるかもしれないなんて まだ実感が、沸いてこなかった。
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