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肉の味は分からず、松波の顔を見れない。
「まあ、お蔭で、こちらは助かってますけど。それに、ふたりが警察辞めても、諦めてくれなさそうですしね」
竹山が口を開くと同時に、テーブルに置いていた携帯が震えた。
「見つけたわよ」という低い声に、「ちょっと待て」と返す。
取り出した手帳に、住所を書き、通話を切る。
「あーあ、冷麺も食べたかったなあ。行きましょうか、竹さん」
そう言って、松波は席を立つ。
「梅林寺さん、本当に頑張ってます。今度会った時は、優しくしてあげて下さいね」
竹山の返事に、松波はほほ笑んだ。
「……じゃないと、向こう側に行っちゃいますよ」
立ち上がった竹山に、姿勢のいい背中からの声は小さく、聞こえなかった。
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