第4話 カタメの世界

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そう言ったあと、鞄から紙の束を取り出し、リリコはめくっていく。 「『カタメ』の教祖の、要星(かなめ せい)さん。私と違って、サインする時、楽で良さそうですね」 「そうですね」と返し、高速に乗り、少し混んでいる道を進む。 無線の声だけになり、杉田は気づく。 「……今の、……冗談でしたか?」 「いえ、普通の感想です」と言われ、ほっとする。 「そうやって、自分より、周りの事ばかりだと疲れませんか」 前を向いたまま、杉田は答えた。 「………そうしてる方が、楽なんです」 声は返ってこないが、言葉を続けていく。 「……僕は、自分を出す方が、ストレス感じるんです……。逃げて、楽してるって分かってるんやけど……」 「それの、どこが悪いんですか」
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