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人が一人通れる隙間にリリコが入り、杉田も続く。
「おい、勝手な事すんな!!」という柳下の声が聞こえた。
中に入ると暗く、ぞくりとした冷たさが全身を包んだ。
「杉田さん、外に出ておいた方がいいですよ」
そう、リリコの声が聞こえ、「出ません」と答える。
「そうですか」と返ってくるのと同時に、両目に眩しい光。
暗さに慣れていた目をしばたかせ、杉田は焦点を合わせる。
目の前に、天井から吊るされた大きなマグロたち。
その背にある、天井からの布がばさりと落ちた。
凍った塊が揺れ、リリコが端を手から離す。
「だから、出た方がいいって言ったのに」
杉田の耳に、リリコの声は届かなかった。
現れた光景に、全てを奪われたからだ。
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