第4話 カタメの世界

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マグロの後ろに、吊るされた、人間たち。 首に紐がぎちりと食い込み、両足は床から浮いている。 見覚えのあるひとりに、杉田は向かう。 「杉田さん、何、してるんですか」 リリコが、赤に両腕を伸ばす杉田に言った。 「現場を荒らすのは、やめて下さい」 隣からの、いつも通りの声を聞かず、地面から浮いている体を抱く。 昨日は、温かく、柔らかかった。 今は、驚くほど冷たく固い。 寒さが、杉田の全身を包んだ。 「……降ろしてあげなきゃ」 唇の震えを感じながら、言葉を漏らす。 「もう、亡くなっています。鑑識の方に、頼みましょう」 「……昨日まで、生きてたんですよ!! どうして、そんなに、冷静でいれるんや!!」
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