第4話 カタメの世界

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細い手首は、とても熱い。 杉田は、自分の冷たい手を離した。 「……ありがとうございます。また、止めてくれて」 そう言い、リリコは、カッターナイフをポケットにしまった。 それを見届け、杉田は口を押え、倉庫を走って出て行く。 待機していた警察の人間たちと逆行し、騒然とし始めた場から離れる。 建物の隅で、声を上げ、胃液まで吐きだす。 ジャージのポケットには、ハンカチはなく、手でぬぐう。 ふらふらと車まで戻ると、運転席にリリコが座っていた。 「どうぞ、使って下さい」 助手席に乗ると、ハンカチを伸ばされる。 いいですと言うと、口に押し付けられた。 「柳下さんたちは、大阪府警に戻りました。私たちも急ぎましょう」  
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