第4話 カタメの世界

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杉田は、柔軟剤の匂いを感じながら、手に取る。 「運転は任せて下さい」 「……海に突っ込んだら、しゃれになりませんよ」 ひりつく喉から声を出し、杉田は、隣に顔を歪める。 「運転、練習します」と言い、リリコは前を向いた。 いつも通りの無表情な横顔に、なぜか、安心した。 ふたりは席を変え、倉庫街を後にする。 高速に乗ってから、すっかり日が暮れているのに杉田は気づく。 全身が冷たいのも。 「あの社長さん、真面目で、家族想いで、社員の誰からも好かれる方だったらしいです」  しばらく無言だった車内で、小さく聞こえた。 杉田は、「そうですか」と返す。 「昨年、奥さんが突然の事故で死に、その後すぐ『カタメ』に入信するまでは」
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