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かくして亜鉛や銅といった金属類を安定的に入手できる経路を求めて、伊織と寛子は大川を渡り、御蔵前の通りを北に歩いていた。
寛子は足の疲れを忘れるために別のことを考えながら歩く。
(ネットで検索できればこんな歩いて探す労力なんて必要ないのに。まったく、江戸時代だねぇ)
「ところで、硫酸の目処はついているのか」
「染物をするときに、硫酸ナトリウムを使うんだよ。芒硝ってこの時代の人は呼んでいるのかな、たぶん。それを使えばいいと思う。それから、銅を精錬したときに一緒に出てきたりもするから、そっちでももらえないかなと思っているんだけど、どうなるかな」
取り敢えず仏具屋の多そうな浅草に向かっている。
「さすが浅草。賑わっているねぇ」
寛子は元の時代でも浅草に来たのは1回しかない。
中学校の修学旅行で来たのだが、人混みが嫌いで結局雷門から先の境内は入ったことがない。
江戸の浅草は平成のときと負けず劣らず混み合っていた。
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